クリスマスイラストコンテスト2006 「記憶に留まる紅い赤」

あれはいつのクリスマスだっただろう。
人気の無い場所で、トランクを持った少年が聖書を読んでいた。
この世の者とも思えぬその姿に、思わず声を掛けたんだ。
すると彼は、百ドル札の束をくれた。
こんな大金をなぜと尋ねると、無愛想にこう言われた。

「早いところトランクをカラにしてしまいたいのさ。
なにせこれには、僕が貰ったプレゼントを入れなきゃならないんでね」

そのトランクは、妙に記憶に留まる紅い赤だった。

何故こんな話をしたかというと、今思い出したんだよ。
あのクリスマスには確か、銀行強盗が一人死んで、死体が見つからなかったってね。

君もどうか、良き聖ニコラウスの祭日を。
――あの少年に出会わぬように。