夢の中で、私は一人の女の子を見つける。
雨上がりの田舎道には彼女以外誰もいなく、とても殺風景なものであったがそれは彼女自身の印象には何も影響を与えてはいない。それどころか、寂しい世界の中にこそ、彼女はよく映えるように思った。幼さ故なのかもしれない。
私はなぜかその手に古いカメラを持っていて、そんな彼女を写真に収めようとしている。理由はわからないが、そのことに私は何の疑問も持ってはいない。
ファインダーに写る彼女を少しだけ見つめて、私はシャッターを切る指を絞った。その瞬間、彼女は雨に濡れた紫陽花ではなく、晴れ間の覗く美しい空でもなく、私を見ている。カメラを下ろそうとすると、小さく世界は揺れ、暗転してしまう。
そうして目が覚める。屋根を打つ微かな音に、私はまた降り出したのだと思うのだが、よくよく考えればそれでは夢の続きだ。私がそのことに気づいて、おかしなものだなと人知れず笑ったのは、実家へと向かう電車にゆられて数分を過ぎたころだった。